隣の県の大学とはいえ、森ケ山線から乗り換えて行くと通学にかかるのは片道二時間半。
一年生のうちはそれで粘っていたけど、二年生になって専門的な授業が増えてくるとさすがに大変で。
大学近くのアパートに引っ越したはいいものの、何の部活にもサークルにも入らず、そして新しい友だちを自分から作る機会が究極に少なかった田舎者の大学生活は、実験と教育学部のほうの授業に出ている間に終わっていったのだ。
「確かに大学生のときのみどは見るからにやつれとったなあ」
「そやね。私も、暇を持て余すってこういうことなんやろなと思いながら見てたわ」
「まあその経験を踏まえた上で、うちのクラスの子たちには自ら動くことの大切さを伝えとるよ……」
「よっ、先生!」
たっくんはそう言って茶化したように笑い、由香もくすくすと肩を揺らす。
あたしはそんな二人に頬を膨らませて、でもじわじわと面白さが込み上げてきて、結局一緒になって笑った。
――“人は変わる”。
それは、よく分かっている。
この町がすべてだった頃とは違う。純粋な白だったあの頃とは違う。
この世の黒い部分もたくさん見たし、現実も見た。
夢、約束、未来、永遠。
そんな言葉を信じていた心は、いつの間にか小さくなってしまった。
変わらないものより、変わっていくもののほうが、圧倒的に多いことを知ったから。