中学生のときは、家業を継ぐと言っていた子たちばかりだったのに。
気付けば、この町に残っている人のほうが少なくなってしまった。
「人は変わるからねー」
「みんなそれぞれ、やりたい事が見つかったんやろな」
感慨深げにそう言う二人。
「やっぱり、そうやんねー……」
小さく呟いたあたしの声は、あぜ道を走っていくバイクの音で消えた。
そう。
人は、変わるから。
「大学行った子で戻って来たのってみどくらいよね」
「まあ、みどは在学中も実験でめっちゃ忙しいって言うわりに週一で帰って来てたからなあ」
「いや、だってごはん作るの面倒くさいし、一人で食べるの寂しいし!」
ここから一番近い農芸高校に三人揃って通っていた頃はよかった。
この町の大半の子がいたし、他の中学校から来た子たちもフレンドリーに話しかけてくれたから、毎日楽しく過ごしていた。
それに、進学校でも何でも無かったうちの高校から、国公立の四年制大学に行こうとするような生徒はあたしくらいなもので。
受験期は職員室の先生全員を巻き込む勢いで色々と調べてもらったのも、今となっては良い思い出だ。
お金が無いので国公立で、先生になりたいから教員免許の取れるところで、という二文は百回以上口にした気がする。
推薦で地方国立の農学部に受かったときは由香とたっくんがお好み焼きをおごってくれて、ってまあそれは置いといて。