「今日は早いんやねー」
「うん。こんなに早く帰れたの久しぶりやわ」
道の端に自転車を停めて、二人に駆け寄る。畑仕事をしていたみたいで、二人とも軍手をしていた。
「あ、そうそう、二人はスミレちゃんの結婚式行けるん?」
「うちは妊婦さんがおるからなー、ちょっと迷っとる」
そう言うたっくんは、白い歯を見せながら穏やかな笑みを浮かべている。
幸せの絶頂期って言葉がぴったり合うような気がする。いや、赤ちゃんが生まれたらもっと凄そう。
「その妊婦さんに畑仕事させるって、どうなん?」
「大丈夫やよー、私が付いて来たかっただけやし」
ふわりと笑った由香のお腹は、見る度に大きくなっていて。優しい顔つきになってきた由香はもう、ママって感じの雰囲気がする。
「手伝おうと思って来たのに、手伝わせてくれやんだくらいやから」
「……そっかー」
ずっと一緒にいた二人が結婚したときは、あたしが一番泣いてしまったし。
大好きな二人の血を引いた子が、由香のお腹の中にいると思うと、やっぱり泣いてしまいそうになる。
もう良い大人だから泣かないけど。いやまあ、お酒飲んだら号泣するだろうけど。
幸せそうな二人を見ているだけで、あたしまで幸せな気持ちになるから不思議だ。
「それにしても、みんながこの町から去っていくね」
ぽつりと言うと、由香もたっくんも苦笑しながら頷く。