あ、そういえば。
スミレちゃんの結婚式っていつだったっけ。
相手の人は大企業の社長さんだって言っていたから、てっきり海外で挙式すると思ったけど、日本でやるみたいだし。部活動の大会の日と被ってなかったらいいなあ。
それにしても、玉の輿に乗るなんて、さすがスミレちゃん。
そんなことを考えながら、立ち漕ぎで橋を渡る。
きょんちゃんの働いている隣町の美容院でヘアアレンジとかしてもらって、パーティードレスは由香たちの結婚式のときに着たものでいいかな。
中村さんちの山を、立ち漕ぎのままでかっ飛ばす。
ワタルは最近忙しそうだけど、行くんだろうか。
ビッグになるってずっと言ってたけど、まさか本当にテレビで見る回数のほうが多くなるときが来るなんて、思ってもみなかったよ。
今度会ったときは、サイン貰っておかないと。
学校と家との往復回数は、自分が生徒だったときと教師になってからとを合わせたら、きっとこの町で一、二を争うだろう。
考え事をしながらでも、道を間違うことはない。
あのビニールハウスのところを右に曲がったら、次の交差点で左に曲がる。
そしたら――、
「みどーっ!」
畑のほうから聞こえた、いつもの声。
ブレーキをかけると、キュッと音がして止まった自転車。
視線を向ければ、案の定。
「由香、たっくん!」
あたしに手を振る二人がいた。