「どんな職業に就いたら、この町に戻って来れると思う?」
また、風が吹いた。
少しだけ秋の匂いがする、生温い夏の風。
太陽を遮る雲はない。
影は濃く、くっきりと地面に写っている。
込み上げてくるそれを、止めることは出来なかった。
「柊、そろそろ乗ろうか」
パパさんに促され、柊は荷物を持って電車に乗り込む。
その瞳は、あたしを見たままで。
「……酒屋とかっ、農家とかっ!」
咄嗟に思い付いたものを言う。
すると柊は口元に弧を描いて、くすくすと笑って。
「なるほど」
いつもの口調でそう言った。
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