「……」
「……」
何かを言いたげな柊と、何かを言いたいあたし。
早く。
早く言わないと。
もう、発車してしまうから。
焦れば焦るほど、何を言ったらいいのか分からなくなって。しっくりくる言葉が見つからなくて。
「みどり」
結局、先に口を開いたのは柊だった。
首を傾げて続きを促せば。
「……将来の」
「え?」
「将来の夢の話、覚えてる?」
いきなりそう言われて、思い出したのは記憶の隅にあったもの。
『柊は、将来の夢ってあるん?』
確か、三者懇談会の前だったかな。
あの時、将来の夢があるかと聞いたあたしに、柊は決まっていないと答えていたような気がする。
「それが、なに?」
聞き返すと、柊は一瞬躊躇うように視線を逸らして、またあたしを見た。
「あの時から、ちょっと考えてたんだけど」
「何を?」
「……将来の夢とは、ちょっと違うかもしれないけど」
「うん?」
風が吹く。
太陽の光を受けて栗色に見える柊の髪が、小さく揺れた。