「――みどちゃん」
パパさんの声に顔を上げる。
駅にはすでに電車が停まっていて、発車する時間まで待機しているようだ。トシちゃんは怠そうに柱にもたれて、煙草をふかしている。
「みどちゃん、柊と仲良くしてくれて、ありがとう」
「……え」
思いもよらなかった言葉に、驚いて目を見開く。
「みどちゃんたちが友達になってくれて、父親としてはすごく安心してたんだよ」
柊は捻くれてるからねー、と付け足したパパさん。それに思わず笑うと、柊はむっとしたように眉間に皺を寄せる。
「捻くれてないから」
「えー、そうかなー」
へらりと笑うパパさんは、優しい父親の顔をしていた。
「みどちゃんも思うよねー? 柊は捻くれてるって」
「はい!」
「違うから。捻くれてないから」
ムキになる柊をパパさんと一緒に笑っていたら、あたしだけデコピンされた。理不尽だと思う、うん。
額をさすりながら、頬を膨らませれば、今度は柊がパパさんと一緒になって笑うものだから、さらに頬を膨らませた。
それからしばらく、三人で他愛ない話をして、発車するまでの時間を潰す。駅のホームにはあたしたち以外に人影はない。
時折吹く風が、伸びっぱなしの雑草を揺らした。