柊の瞳にあたしが映る。
「で、……夏は?」
あたしの瞳に柊が映る。
がたごと、がたごと。
軽トラの荷台は揺れ続ける。
エンジンの音がうるさいし、排気ガスの匂いもする。
ふと柊から視線を外せば、視界に広がるのは深い緑で覆われた山々。その奥には藍色に見える山脈が連なっている。
町を覆い尽くしているのは、畑と田んぼ。ぽつりぽつりと家が建っているけど、どれもこれも古い日本家屋ばかり。
いつもと変わらないはずの空は、苦しいほどに青かった。
「……夏は、」
手を、握る。
「夏は、柊がいた」
そう言うと、柊は笑う。
柊が笑うから、あたしも笑った。
笑わないと、泣いてしまいそうだった。