「スイカは川で冷やさないと駄目で」
「うん」
「雑草は根から抜かないと駄目で」
「うん」
「夏祭りの一番最後には、大きな花火が上がる」
「……、うんっ」
頷いた。
大きく、大きく、頷いた。
「俺だって、この町のこと、知ってる」
きゅっ、と。
あまりにも自然に握られた右手。
ぎゅうっ、と。
力を込めて握り返すと、柊が笑った。
「トーキョーにはないもの、この町にはいっぱいあるやろ?」
だからあたしも、負けじと笑顔で言ってやった。
そしたら柊は、また手を強く握って笑った。
「うん」
だからあたしも、また手を握り返す。
「この町はねー、秋は紅葉が綺麗やし」
「うん、それは聞いたことある」
笑う。
「冬はたくさん雪降るし」
「寒いのは嫌なんだけど」
笑う。
「春は桜が綺麗やし!」
「俺、花粉症なんだけど」
「あーそれは可哀相に……」
「哀れむな」
――笑え。