「そんじゃ、出発すんぞー」
急かすような俊彦の声。
ぱっと顔を上げて、クラスメイトの集団を見渡せば。
「……、あ」
みどりと、目が合った。
「……みどり」
小さく口を動かして、呼んでみたけど。
何を言えばいいのか分からなかった。
みどりは口を真一文字に結んで、じっとこっちを見つめているだけで。
「じゃあな、みどり」
結局、落ちたのはそんな言葉。無難と言うか、何と言うか。でも、それ以外に思い付かなかったんだ。
みどりは、というと。
「……うん」
たった、それだけ。
頷いただけ。
この先、会えるかどうかも分からないのに。
これが最後かもしれないのに。
あまりにも呆気なかった。