「達郎」
「ん?」
「ありがとう」
軽トラのすぐそばに立っていた達郎に、それだけ言って微笑むと。
「……なんでそういうこと、言うかなあ」
ぽろりと一粒、達郎の頬を伝った水滴。
目元を手の甲で拭い、必死に白い歯を見せようとしているのを見たら、柄にもなく泣いてしまいそうになった。
「昨日から堪えとったのに……」
「うん、ありがとう」
もう一度言うと、達郎は大きく頷いた。
それだけで、十分だった。
「由香も、ありがとう」
その隣に立っていた由香に、視線を移してそう言うと。
「私は何もしとらんよ。むしろ、柊にはお世話になりまくったし」
こちらこそありがとう、と微笑む由香の髪には、今日も赤に白のドットが入ったリボンのヘアゴムが付いている。
ちらりと達郎を見てから、口パクで頑張ってと伝えると、由香は穏やかに笑った。