「なに」
「あの、これ、クッキーなんだけど、……良かったら受け取って?」
差し出されたのは、小さな紙袋。
いつも強気な相澤が、俯き加減で渡してくるものだから。
「うん、ありがとう」
素直に受け取ると、相澤は驚いたように顔を上げた。
「なんか、意外」
「え」
「柊くん、受け取ってくれないと思ってたから」
どこか嬉しそうに話す相澤に、俺も小さく笑った。
確かにその自慢げな話し方は苦手だったけど、別に悪い人じゃないってことくらい分かっている。
「柊くんが来てくれて、楽しかったよ」
「相澤と話すのも、なかなか面白かった」
「まあ、当然だよね。私ほど知識が豊富な人って、この町にいないから」
くるくるの巻き髪をいじりながら、真顔でそう言った相澤。
あーはいはい、と適当に頷くと、満足げに笑ってみせた。
「柊、そろそろ行かんと、本気で間に合わんぞ」
ププッとクラクションを鳴らして、俺を呼ぶ俊彦。
それに頷いて、荷台に乗り込む。