「え」

「あー、ごめんごめん!」

「そりゃまだ五月の終わりやもん、渋いって! でも柊が食べたそうな顔してたでさ」


すごく可笑しそうに笑う二人を見て、してやられた、と思う。

だからあんなに目を輝かせてたのか。

口の中に広がっていく渋さに、なんとも言えない気持ちになる。


ちらっとみどりを見ると。


「ふはっ、柊さん、嵌められましたなー」


けらけらと笑っていた。

……うっぜ。みどりに笑われるのだけは、気に食わないんだけど。


そう思うのに、睨んでやろうと思ったのに。


「……ははっ」


そんな自分が、何故か阿呆らしく思えて、気付けば俺も三人と一緒に笑っていた。


「やー、毒味係発見したなー」

「うっせーよ」

「柊、面白いねー」

「知るか」

「まあまあ、そう怒らんでもー」

「……」


みどりはツツジをくわえながら、たしなめるように上から発言する。

普通なら苛立つのに、みどりだと別に気にならない。



……やっぱりこいつ、変なやつだ。


そう思いながら見上げた空は、もう橙色に染まりつつあって。

長く伸びた四人分の影は、ひとつの大きなかたまりになっていた。