これ、洗わなくても大丈夫なのか? 農薬とか、心配なんだけど。
でも、目を輝かせて俺を見ている達郎と由香には、洗うという考えはないように思える。
ってことはこれ、無農薬?
「どうしたー?」
いつまでも食べない俺を変に思ったのか、首を傾げる達郎。
「これ、そのまま食べていいんだよな?」
「え、うん」
念のために聞くと、当たり前だとでも言いたげに達郎は頷いた。やっぱりこの町の普通と、俺の普通は違うらしい。
意を決して、ひとかじり。
カリ、と音が鳴る。まだ熟れてないと思う、と言っていた達郎の言葉は本当だったようで、柔らかくはない。
三回くらい噛むと、次第に口の中がじわじわとヤマモモに包まれた。
甘くはない。
全然甘くない。
というか、むしろ、あれだ。
「……しっぶい」
眉間に皺を寄せてそう呟くと。
「……ぷっ」
「……あははっ!」
達郎と由香は、二人同時に吹き出した。