「俺もするわけ?」
「当たり前やん! 先に落ちたほうが負けやからな!」
「面倒くさ」
「はい、始めますよー」
しゃがみ込んで、柊の腕を引っ張ると、渋々といった様子で柊は隣にしゃがんだ。
風が吹くと、ろうそくの火はゆらゆらと揺れて消えそうになる。
「やばいやばい、ろうそく守らんと!」
「もういい?」
「だめだめ! 風が止んでから!」
そう言っているうちに風は止んでいて。
せーの、で同時に火を付けて、じっと見つめていたら、オレンジ色の火玉が花火の先端に出来た。
車も人も、まったくこの道を通らない。
辺りはひっそりとしていて、リーリーと虫の鳴き声が聞こえる。
時折、田んぼの稲がさわさわと揺れる音がした。
オレンジ色の火玉は、パチパチと音を立てながら火花を飛ばしている。
隣の柊をちらっと見れば、あんなに面倒くさそうにしていたくせに、真剣な顔で自分の花火を見つめていた。