それにしても、この庭は広すぎる。足元はいつしか、なだらかな傾斜になって……、あれ?
「みどり」
「はいよ」
「ここどこ」
本日二回目の、この質問。
「え、たっくんちの山やけど?」
「……は?」
達郎の家の、山?
「ちなみにねー、あれが由香んちの山で、その隣がトシちゃんちの山」
「……」
理解出来ない。っていうか、俊彦の家も山を所有していたのか。
ふーん、と頷きながらも、ここは本当に俺の今までの常識が通用しなくて、知らないことばかりのところなんだと改めて思った。
そうしているうちに、どうやら目的地にたどり着いたらしい。
「お、なっとるなっとるー」
達郎の声で顔を上げると、背の低い一本の木があった。濃い緑色の葉で、丸くて小さな赤い実がなっている。
……これがヤマモモ?
「んー、けどまだちょっと早いかな」
「そやなー」
達郎と由香はそう言いながら、ひとつふたつ、その実を採る。
「あ、柊」
「……?」
「これ、味見してみる?」
達郎から差し出された赤い実。
初めて見たそれは、桃というよりはキイチゴのようで。どんな味がするのか気になって、受け取った。
隣でみどりは、どこから取り出したのか知らないけど、ツツジの蜜を吸っていた。