肩に掛けていたカゴバッグを下ろし、その辺に適当に置いて、外に出る。
トシちゃんはすでに花火セットを開けて、ろうそくを取り出していた。
「あ、みどり、そこにバケツ置いてあるやろ」
「うん」
「それ持ってきて」
近くにあったバケツを言われるままに持っていくと、トシちゃんはそのバケツで用水路から水を汲んで、アスファルトの上に置く。
そして、ポケットからライターを取り出し、ろうそくに火を付けると、花火セットを指差した。
「あとは適当にしてくれ」
「え」
畑さえ燃やさんかったらいいわ、と付け足して、トシちゃんは近くのベンチに腰掛けて、煙草をふかし始めた。
準備するだけしておいて、自分は見物ですか。
「……やるか」
「うん」
「どれにする?」
「線香花火!」
「は?」
「え、だめ?」
「普通、最後だろ」
確かに、線香花火は最後にすることが多いけど、最後にしなきゃいけないっていう決まりはないし。
線香花火の束を手に取り、そこから二本引き抜いて、一本を柊に渡す。