小さく溜め息を吐いて、また一口麦茶を飲む。
あたし、こんなに記憶力無かったっけ。
「はーあ……」
「幸せ逃げてくぞー」
自分の記憶力の無さに項垂れるあたしを、呑気なトシちゃんはけらけらと笑う。そんなのは無視だ、無視。
カラン、氷が音を立てる。コップに付いた結露が、たらりと落ちる。
さっさと終わらせるつもりだった日記は、思っていたより時間がかかりそうだ。面倒くさいなー。
そう思って、また畳に寝転ぼうとしたときだった。
「……あ、でも」
不意にトシちゃんが口を開いた。
顔ごとそっちに向けて首を傾げると、トシちゃんはゆっくり紫煙を吐いて、あたしを見た。
「柊に聞けば、分かるやろ?」
「……はい?」
言っていることが理解できなくて、また首を傾げる。
トシちゃんは灰皿を自分のほうに引き寄せながら、だって、と続ける。
「だってお前ら、ずっと一緒にいたやろ?」