そう思って、そばに置いてあった夏休みのしおりを手に取る。
何も書いていない日記のページを開いて、下敷きを差し込む。
数枚のわら半紙の端をホッチキスで留めて、本のようにしただけの簡単な作りのそれ。
ぐっと力を込めて折り目を付けて、シャーペンを握った。
「えーっと、一日目は……」
何をしたんだっけ。
少し顔を上げて、曖昧な記憶を辿っていると、トシちゃんが戻ってきた。
「ん」
「ありがとー!」
差し出された麦茶を受け取る。口を付ければ、カラン、と氷が音を立てた。よく冷えていて美味しい。
「みどり、読書感想文は?」
「先に日記書くことにしたんよ」
「へえ」
大して興味はなかったらしく、トシちゃんは適当に頷いて、また煙草をふかし始めた。
それにしても、一日目は何したんだっけ。首を捻ってみるけど、全然覚えていない。
「トシちゃーん」
「あ?」
「一日目は何したんやっけ?」
「俺が知っとるわけないやろ」
ですよねー。