また、畳に寝転がった。ぐーっと伸びをして、目を閉じる。
「……みどり、腹見えとんぞ」
「トシちゃんのへんたーい」
片手でTシャツの裾を引っ張って、お腹を隠す。
風鈴の音がまた微かに聞こえて、扇風機の風が通り過ぎていった。
うーん、やる気がないときに頑張ろうとしても、いいものは出来ないと思うんだよね。人間、本能に逆らわずに生きるべきだと思うわけ。だから、ほら。
眠いときは寝てしまうのが一番だと思……、
「あ、ごめん」
「う!」
ぽーん、と軽く蹴られたお腹。
再び飛び起きると、段ボールを抱えた柊が立っていた。
「女の子のお腹を……っ!」
「あー、はいはい」
「きいいぃぃい!」
「みどり、そういうのどうでもいいで、何か書け」
頬を膨らませながらも、また渋々原稿用紙と向き合う。
トシちゃんはあたしの夏休みのしおりを勝手に捲り始めた。
「うわ、お前、日記も書いとらんの?」
「これはまとめて書くのー!」
「え、初日から止まっとるけど」
「そのうち書くのー!」
白紙のままの日記のページ。その日の天気と、出来事を二行ずつ書かないといけない。
暇そうに欠伸をしたトシちゃんからしおりを奪い取って、遠くに置く。
「天気とか覚えとんのかー?」
「三十路うっさいー」
ふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向けば、トシちゃんはあたし目掛けて紫煙を吐いた。
「くっさー! 煙草くさっ!」
「ガキが生意気言うからやわ」
大人気なさすぎるでしょうよ。