「普通に焼きそば食べて、ポテト食べて、たこ焼き食べて」
「……」
「たっくんの歯に青海苔付いてたのを、二人で笑ったりして」
「……うん」
「あとは一緒に射的したり、花火見たくらいで。本当にそんだけ」
「ふーん……」
ぱさり。
耳下で結ばれた黒髪の束が、肩から落ちる。
その黒髪を結んでいるのは、赤に白のドットが入ったリボンのヘアゴム。達郎が、由香の誕生日にあげていたものだ。
「それだけで、今は十分」
ふわり、ふわり。
花が咲くように笑う。
「告白とかは?」
「……ふふっ」
「え、なに」
「ううん。それ、みどにも聞かれたなーと思って」
セミの鳴き声が止んだ。
太陽は相変わらず、地を焦がしている。
「簡単に出来たら、苦労しやんよ。今の関係が壊れるくらいなら、言わんほうがいいし」
「……ふーん」
「それに、今は全然脈なしやもんね」
そう言って、諦めたように笑う由香。
でも。
「……そうでもないと思うけど」
「え?」
きっと、由香は気付いていないだけだ。