「好きなやつ持って帰っていいで、水やりと草抜きもよろしくね」
「はーい」
「それじゃ、私は仕事があるから、あとは頼んだ」
先生はすぐに職員室に戻っていく。
それだけのために、完全防備をしていたのか。
「……必死だな」
「え、なに?」
「別に」
短く返事をして、収穫し始めた三人の元に駆け寄った。
農家の子だけに、由香も達郎も何となくその姿が似合う。
みどりも随分と手慣れたように収穫しているものだから、俺はただ日陰でそれを眺めるだけ。
「これはどう?」
「あ、いいと思うー」
「柊、この大きいやつ、切っていいで」
達郎に言われるがまま、指差されたそれの茎を切る。
鮮やかな緑色で、大きくて、ごつごつとしているゴーヤ。
切ってから思ったけど、これ、持って帰ったとしても、誰も食べないんじゃないだろうか。
ゴーヤって苦いし。俊彦とか、かなりの甘党だし。
「持って帰ったら、トシちゃん喜ぶと思うでー!」
「え」
「トシちゃん、ゴーヤチャンプル大好きやからねー」