「みーんなー、お待たせーっ!」
その声に振り向くと、みどりがジョウロを両手で持っていて。
「こんな暑い日に、いきなり呼んだりして悪かったねー」
「あ、雅子先生!」
その隣には、サングラスをかけた先生が立っていた。
「なんか久しぶりやねー。見てない間に四人とも焼けたなー」
「雅子先生は日焼け対策ばっちりですね」
「この歳になると、シミがね……って何言わせとんのよ」
こつんと達郎の頭を小突く。
「えー……、めっちゃ理不尽……」
「先生、そんなことより、今日はなんで私たち呼ばれたんですか?」
一人で水をやっているみどりを横目に、由香がそう尋ねる。先生は思い出したように、あーそうそう、と言って俺を見た。
「ゴーヤの収穫しようと思ってさ。ほら、柊はもうすぐ……ねえ?」
「あ、もう三人には言ったんで、大丈夫ですよ」
「あら、そうなん?」
ぱちぱちと瞬きをして、先生は意外そうに首を傾げた。
「え、先生は知っとったんですか?」
「そりゃ、担任やし」
「あー、そっか」
ジョウロは空っぽになったらしく、みどりは地面にそれを置いて、由香の隣に立つ。
セミが一匹鳴き始めれば、争うように二匹三匹と鳴き声が増えていく。
「トーキョー戻っちゃう前に、どうせならみんなで収穫しようかなって思ってさ」
そう言って、俺たち一人一人にハサミを差し出した。