すると、突然みどりが立ち止まるものだから、危うくぶつかりそうになる。


「う、えっ、あ、……はい」

「なに、その返事」

「いや、あの……」


みどりは言いにくそうに、ちらっと俺を見上げた。


「なに」

「いや、べつに、食べてますよ、多分、はい」


しどろもどろ。はっきりしない答えを寄越すみどりは、明らかにそれ以外のことで狼狽しているみたいだ。


「……なに」


もう一度聞くとみどりは、うー、と唸ってから言った。


「……柊、に」

「俺?」



「柊に、みどりって呼ばれたなって思っただけです、ちょっと嬉しかったりしたんです!」





……は?



なんだそれ。

名前で呼ぶのが普通だって言ったのはみどりだろ、と言おうとしたときには遅かった。


「以上! はい、行くよ!」


ぐん、と強く腕を引っ張られる。なかば引きずられるようにして、そのあとを歩く。


「嬉しかった?」

「うっさいです、べつにさっき無視されたことなんか気にしとらんし」


さっき放置したことを気にしてたのか。でもあれは、扱い方が分からなかっただけだし。そう心の中で補足するものの、みどりはずんずん歩いていく。

ちらりと見えた口は、一文字に結ばれていて、眉間にぐっと皺も寄っていた。




なんだ、こいつ。