「今年は一緒に見なくていいわけ?」
「うん! だって、由香の応援したいし」
「あっそ」
「それに今年は、柊がいるからね!」
水ヨーヨーを跳ねさせると、ぱしゃぱしゃと音がする。
「一人で見るのは嫌やしー」
「……そうですか」
「あ、でも、由香とたっくんが付き合ったらどうしよう!」
「は?」
「あたし完全にお邪魔になるやんか!」
「応援するんじゃなかったわけ?」
「そりゃ、応援しとるけどさー! 一人は嫌や」
「……」
「というわけで、柊さん!」
「なに」
「来年も再来年も、あたしと一緒に花火を見ることを命じる!」
……あ。
勢いで言ってから、ふと気付いた。
「あー……、うん」
曖昧に頷いた柊の横顔を、ちらっと盗み見る。無表情を装っているように見えるけど、いつもと何かが違う。
その顔を見たら、頭の片隅にあった予感が、確かなものに変わっていくような気がした。
柊が、この顔をしたのは、いつだった?
またアナウンスが流れて、提灯の明かりが一斉に消えた。ざわめきは遠い。風が緩やかに、境内を吹き抜けていく。