それっきり、あたしも柊も黙ったままで。
遠くで聞こえるざわめきと、虫の鳴き声と、あたしがかき氷を吸い上げる音が、その沈黙を繋いだ。
そうして、しばらく経った頃。
何かのアナウンスが流れて、ざわめきが急に大きくなった。
「……何の騒ぎ?」
柊は不思議そうに口を開く。頬の熱はもう引いていた。あたしは空っぽになったかき氷のカップを見つめながら、落ち着きを取り戻した頭で考えを巡らす。
「この時間やったら、花火かもね」
「花火?」
「うん、打ち上げんのー」
「ふーん」
「って言っても、山火事になったら大変やから、そんなに大きくないけどなー」
「あー、市販のやつ?」
「うん」
耳を澄ましていたら、もう一度流れたアナウンス。ああ、やっぱり、もうすぐ花火の時間らしい。
「でも毎年、一番最後にめっちゃ大きくて綺麗な花火が上がるんよ」
「最後に?」
聞き返してきた柊に頷く。
「由香とたっくんと、毎年一緒に見とったんよ」
「へー」
「去年はりんご飴食べながら見たし、一昨年は焼きそば食べながら見たし、その前は綿菓子やったかなー」
そう思い返してみれば、由香とたっくんと一緒にこの花火を見ない年はなかった。これから大人になっていくに連れて、三人で過ごすことは段々と減っていくんだろう。