首を傾げると、何故かものすごく呆れられた。溜め息まで吐かれると、あの、なんか悲しくなるんですけど。
訳が分からないあたしは、面倒くさそうに顔を歪める柊を、ぼーっと眺めることしか出来なくて。
「だからー……」
と、柊が口を開きかけたとき。
「えー、たっくん、いっつもメロンやん。飽きやんの?」
「由香こそ、いっつもレモンで飽きやんのー?」
「飽きやんよー! あ、二人ともおまたせー……って、あれ?」
かき氷を持った由香とたっくんが、こっちに向かって来ていて。
「なんで、手繋いどんの?」
由香が不思議そうにそう言ったのが、合図だった。
「みどりっ」
強く引っ張られた手。
走り出した柊。
その口元は、綺麗な弧を描いていて。
からん、ころん。あたしの下駄が鳴る。
「え、ちょっと、二人とも……!」
追いかけてきたその声に、ちらっと振り向くと、戸惑ったような由香とたっくんの顔が視界に入った。
ぱっと見た感じ、カップルみたいな二人。
そこまで考えて、ようやく柊の言いたいことが分かった。
「……そういうこと?」
斜め前を走る背中に、問いかけてみる。
「そういうこと」
人混みの中、小さく聞こえた返事は、どこか楽しげだった。