「あ、かき氷だ」
呟いたのは、由香よりちょっと遅れてやって来たたっくん。その目は輝いていて、ついでに言うと、由香も物欲しげな目をしている。
「いいなー、俺も欲しいわ」
「私も。一緒に並ぶ?」
「そうしよか」
由香の提案に頷いて、たっくんは柊に目を向ける。
「柊は、かき氷いらん?」
「うん、別にいらない」
「りょーかいー。じゃあ、みど、柊と一緒に待っといて」
「ういー」
返事をしつつ、かき氷を一口食べると、イチゴ味が広がる。少し暑かったから、口内はちょうど良い冷たさになった。
それにしても、人が多いなー。迷子になったら、探すの大変そう。
そんなことを考えながら、かき氷の列に並ぶ由香とたっくんを、人込みから少し離れたところでぼんやりと待っていれば。
「みどり」
「お?」
いきなり、握られた手。
何事かと顔を上げると、柊は口角を上げて、あたしを見ていて。
「どういう状況か分かってるよな?」
「はい?」
「……」
「……え、なに?」