「あ、そだ。たっくーん」
「ん?」
「ヤマモモはどうなっとんの?」
……ヤマモモ? 何だろう。食べられるものだろうか。
俺が頭上にハテナを浮かべていると、達郎は由香の問いかけに少し考える素振りを見せたあと、ブチブチブチッとツツジを摘んで言った。
「じゃー、見に行くか」
うん、と頷いた由香と、嬉しそうに何度も頷くみどり。俺に背中を向けて、どこかに足を進める三人をぼんやり眺めていると。
「ほら、柊も行くんよっ」
みどりに腕を引っ張られた。
女子に触られた。
それだけで衝撃だったのに、その行動があまりにも自然だったことにさらに衝撃を受ける。
この町では普通のことなのだろうか。仮にそうだとしたら、ここは俺の知らない世界すぎる。
「ヤマモモジャム好きやわー」
「まだ熟れとらんと思うけど」
少し前を行く達郎と由香の会話が耳に入り、ハッと我に返る。
やっぱりヤマモモは食べられるものらしい。
ぼんやりそんなことを考えていると、いまだ掴まれている腕が視界に入る。
慌てて振り払おうとして、みどりの手首が細すぎることにまた衝撃を受けた。
「みどり、ちゃんと食ってんの?」
いつの間にか、ぽろりと言葉が落ちた。