「あー、ちょっとちょっと。そこで集まっとったら、他の人の迷惑やから。痴話喧嘩なら向こうでやっといで」
「痴話喧嘩やないしっ!」
「ワタルうっさーい」
言われてみれば、この狭い通路で集まっているのは、他の人からしてみたらすごく邪魔だろう。おじさんに促されるままに、結局みんなはそれぞれ違う方向に散っていった。
「ワタルときょんちゃんって、相変わらず仲良しやねー」
「うん、まあ、確かにねー」
また四人に戻ったあたしたちは、再びぶらぶらと歩く。
中指に付けた水ヨーヨーを、ときどき跳ねさせる。
由香に手首を掴まれながら、軒を連ねる屋台をぼーっと眺めていたら、ある文字を見つけた。
その途端、居ても立ってもいられなくて、また由香の手から逃げると、焦ったような声が追いかけてきた。
でも、こればかりは譲れない。
「おばちゃんっ! イチゴくださいっ!」
「あらー、みどちゃん。今日は一段と可愛くしてもらったねえ」
「えへへ」
顔見知りのおばちゃんは、そう言いながら、粉々の氷の上に、赤いシロップをかけていく。
「いっぱいかけてー」
「はいはい」
笑顔でサービスしてくれたおばちゃんが、最後にスプーンストローを刺すと、サクッと音がした。
「みどっ、勝手に行かんといてって、何回言ったら……」
「ごめんよー」
追い付いてきた由香は、息を切らしていて、ちょっと申し訳ない気持ちになる。謝ると、由香はあたしの手元に視線を落とした。