「その浴衣すっごいなー!」

「これはねー、パパの知り合いの人がね、私に似合うだろうって言って、譲ってくれたの。ほら、私って何着ても似合うからー」

「へー」


大きなバラとリボンが描かれていて、ラメも入っているその浴衣は、確かにスミレちゃんに似合う。よく見ると、爪はショッキングピンクのマニキュアが塗ってあって、その上から色々と乗っていた。爪の中に、土とか入らないのかな。

そう思いながら凝視していたら、スミレちゃんはいつの間にか、柊に話し掛けていて。


「わ、柊くんの私服、初めて見たっ! センス良いねー」

「……」

「本当やね。っていうか、柊くん自体が格好いいから、似合うんやろね」

「確かにそうかもー!」

「ワタルが着ても、絶対似合わんと思うしー」

「俺が何やって!?」


きょんちゃんの呟きに、高い声がキンキンと響く。そっちを見たら、案の定、綿菓子を持ったワタルが、クラスの子たちと一緒にいた。


「うっわ、ワタルやん!」

「俺が何って言った!?」

「何も言っとらんわ、自意識過剰っちゃうのー?」

「嘘や、絶対何か言ったやろ!」

「言っとらんってばー」


いつものように始まった二人の言い合い。夏休みに入ってから聞いていなかっただけなのに、ちょっと懐かしい感じがする。クラスのみんなとも、全然会わなかったから、これだけ揃うと楽しいなー、なんて。


思ったのも、束の間。