それでも、こんな楽しいところに来たら、うずうずしてしまうのは仕方ないだろう。

すれ違うのは見慣れた人ばかりだというのに、今日は雰囲気が違うから、なんだか知らない人のように見える。夏祭りって感じだ、うん。


「みどちゃんみどちゃん!」


由香に引かれるまま歩いていたら、不意に声をかけられた。振り向くと、顔見知りのおじさんが、手を振っていて。


「みどちゃん、やって行かんー?」


そう言って、おじさんが指差したのは、子供用の小さなビニールプール。その中で浮かぶものが見えた途端、あたしは由香の手から逃げた。


「やってく、やってく!」

「ははっ、さすがみどちゃん!」


おじさんは朗らかに笑いながら、こよりを差し出してきた。それを受け取って、ビニールプールの前にしゃがみ込む。


「もー、みどっ! 勝手に行かんといてって言ったやろー?」

「ごめんよー」


からん、ころん。

下駄の音と、由香の声が後ろから追いかけてきて、その向こうには呆れた顔をした柊とたっくんが見えた。軽く謝って、またビニールプールに向き直る。


「なに? ……水ヨーヨー?」

「うんっ!」


不思議そうな柊に頷く。

ビニールプールの中は、鮮やかな水ヨーヨーでいっぱいになっていた。