そうこうしていれば、見えてきた目的地。いつもの倍以上の時間をかけて辿り着いたのは、町の神社。ひっそりと佇んでいるのがこの神社の本来の姿だけど、今日は町で一番活気がある。
無数に飾られた提灯は、薄暗くなってきた辺りを、ぼんやりと照らしていて。狭い通路に並べられた屋台は、隣との距離がゼロなんじゃないのってくらい窮屈そうにしている。
あたしたちみたいに浴衣姿の人も多い。この町にこれだけ多くの人がいたのか、と思うほどたくさんの人で溢れ返っていた。
「やっぱ人多いなー、はぐれやんように……」
「なに食べるっ、なに食べるっ!?」
「あ、こら待て、みど!」
うっきうきで駆け出そうとしたら、全力でたっくんに止められた。
頬を膨らませてみたけど、何の効果もなし。くっそう。
「とりあえず、一周する?」
穏やかに笑った由香に賛成して、四人で人混みの中に入った。
わいわい、がやがや。一歩踏み入れば、人の熱気に包まれる。あちこちから美味しそうな匂いもした。
「あ、りんご飴!」
「まだ駄目」
「むー……、焼きそば!」
「一周してから買いなよー」
「ポテト!」
「こら」
視界に入ってきたものの中で、食べたいと思ったものを次々と言ってみたら、由香に手首を掴まれた。勝手に動くなってことらしい。