「はい、みど息止めてー……、せーのっ」

「ぐうえええっ!」


ぎゅっと強く締められた腰紐。

胃の中の物がリバースしそうだよもう少し手加減して下さいっていうか息止めろってなんか違うよおかーさあああん……!

あたしが心の中で叫んでいる間に、お母さんは慣れた手つきで帯を結ぶ。


「よし出来たっ」


ぽん、と両肩を叩かれて我に返る。

去年と同じ、白い浴衣。色とりどりの蝶々が描かれてるそれは、かなりお気に入りのものだ。


「うへへへへ」

「あー、回るな回るな」


頭を片手で掴まれ、強制的に固定される。

いやー、だって、嬉しくってさー。

あたしが一人でにやにやしているうちに、お母さんはあたしの髪の毛をいじっていて。シューッとスプレーをされて、何がどうなってるんだか分からないけど、ケープの匂いがした。


「ん、かんせーい」


最後にぐっと、あたしの頭に何かを刺して、お母さんは満足げに笑った。

こういうときだけ張り切ってくれるけど、あたしのことを着せ替え人形だとでも思っているのだろうか。まあ、有り難いからいいんだけど。

差し出された鏡を見れば、ふわふわのお団子が頭の上に乗っていて、それに花のピンが刺されていた。