「……線路?」
「うん、森ヶ山線!」
大きく頷いて、みどりは笑う。
そしてまた俺の腕を引っ張って、線路に近付く。
たった一本の、かなり幅の狭い線路だった。この上を電車が走るとは到底思えないけど、目の前にある踏切が嘘ではないことを物語っている。
「見たかったんよねー、ずっと」
「……見たことなかったわけ?」
「あるけど、こんなにじっくり見たことはないよー。あんまりこの辺まで来やんからな」
軽い足取りで、みどりはその踏切を越える。遮断機が下がっていないため、俺も普通に通ることが出来た。
「おー……!」
線路の上に立ったみどりは、声を弾ませた。隣に並んで、俺もそっと視線を上げる。
それは、真っすぐだった。ただ、真っすぐだった。
果てが有るはずなのに、見えなくて。終わりが在るはずなのに、見えなくて。
ひたすらに伸びた線路は、どこまでも続いているような気がした。
「おー……」
柄にもなく、感嘆の声が漏れた。
みどりと同じ感想だと、頭の隅で思う。