「で、これは……」
「ツツジやけど?」
「いや、それは分かるけど」
聞きたいのは花の名前じゃない。その蜜が甘いことも、三人が蜜を吸っていることも理解できている。だけど、そうじゃなくて。
「なに? 柊」
「こんなに摘んで、大丈夫なわけ?」
そう聞くと、達郎と由香は首を傾げて顔を見合わせる。
「まあ、俺んちのやし……」
「埋めたら肥料になるし、なあ……?」
みどりは無言でそっぽを向き、次から次へと花を摘み、蜜を吸っている。
さっき放置したことを拗ねているのだろうか。
何はともあれ、そんな三人の反応を見ているかぎり、自然破壊の文字は頭にないらしい。
「ふーん」
そういうものなのか。曖昧に頷き、自分の親指と人差し指に挟まれたピンクの花へと視線を戻す。
見様見真似で緑色のガクを取り、おしべとめしべを引き抜いた。こんなの、幼稚園のとき以来だ。
「うまー」
「ちょっとみど、一人でそんなにいっぱい取らんといてよ」
由香に怒られているみどりを横目に、花の尖端をくわえる。舌先でじんわりと感じる甘さ。遠い昔に吸ったツツジの蜜は、こんなにも甘かっただろうか。
「美味いやろ?」
花をくわえながら首を傾げた達郎に頷く。
すると達郎は、白い歯を見せて満足げに、にかっと笑った。