「ふー、走った走ったー!」
楽しそうにそう言って、みどりが足を止めたのは、見慣れない風景が広がるところだった。
こういう場所のことを、町外れ、っていうんだろう。
もともとこの町には街灯が少ないけど、ここを照らす明かりは、空に輝く星と月だけだと言ってもいい。木々が立ち並び、葉も生い茂っているものだから、その微かな明かりも結構遮られている。
日中はあんなに暑かったのに、太陽が完全に姿を消した今は随分と涼しい。リーリーと、虫が静かに鳴いていた。
「疲れた」
息を切らしながら呟く。
すると、みどりは笑って。
「でも、楽しかったやろ?」
ちょっと当たってるから、何も言わずに顔を逸らした。
「っていうか、いきなりここに来た意味が分からない」
ぼそりと言えば、みどりはまた俺の腕を引っ張る。
「見たいものがあるんよー」
「は?」
ガタガタのアスファルトの上を進む。
みどりが歩くたびにひょこひょこと跳ねる寝癖は、やけに嬉しそうに見える。それにしても、この時間まで寝癖が付いてるって、ある意味凄いような気がする。
「ほらっ!」
ぼーっとしていると、不意に視界が開けた。
そして、みどりが意気揚々と指差しているほうを見て、瞬きを二回。