「お、ありがとー!」

「俊彦、ついでに枝豆とかないー?」

「ない」


自分勝手な大人たちに白い目を向けて、そのまま自分の皿に視線を落として、もう一度溜め息を吐いた。


そのとき。



「柊さん、柊さん」


小さく叩かれた肩。視線を向けると、みどりは何故かひそひそ声で。


「……なに」


つられて、ひそひそ声になりながら返事をすると、ぐっと顔を寄せてみどりは言った。



「夜の散歩に行きませんか」

「……散歩?」

「うん!」


大きく頷いたみどりは、目を輝かせている。

意味がよく分からなくて首を傾げれば、くいっと腕を引っ張られた。

「よっし、行こう!」

「いや、意味が分か……」


そこまで言って、ふと言葉を止めた。

なんか、嫌な視線を感じる。

ちら、とそっちに目を向けると、にやにやと口角を上げた父親と目が合って。


「なになにー? 愛の逃避行ですかー?」

「断じて違う」