「俺も腹減ったわー。あ、そういえば」
「なに」
「夕飯は、竹内さんちとバーベキューするらしいで」
「……は?」
竹内さん、……って誰だ。
首を傾げていれば、隣でひょこひょこと頭が動く。
「え、うちと!?」
「おー」
「……あ、そうか」
そうだ、みどりは“竹内みどり”だ。
思い出して、少し驚く。
名字で呼び合うのが普通だった、あの街。名前で呼び合うのが普通の、この町。
あの街では、名前を言われても名字と一致しないことが、多々あったけど。この町では、名字を言われても名前と一致しないだなんて。
随分と、この町に慣れたものだ。
ふっと笑いを漏らすと、みどりが不思議そうに俺を見上げた。
「え、なに?」
「何でもない」
短く答えて、ラムネを飲み干す。太陽の光を受けて、きらきらと輝いたラムネの瓶が、少し眩しかった。
「っていうか、なんでバーベキューすることになったわけ?」
「……お前の父親が、宴会したいって言い出したから」
うんざりとした顔で言った俊彦。
さっと背筋が凍る。あの人が酒を飲むと、いつも以上に面倒くさいことになる。
……大丈夫なのだろうか。