パタパタと両手で自分を扇いでみるけど、結局生暖かい風しか吹かないから、気休めにもならない。セミの合唱は、また一段と大きく聞こえ始め、それだけで暑さが倍増したような気持ちになる。
「あっ!」
「……なに」
「柊、まだ軍手嵌めとったん?」
ピッと指差されたほうに視線を向けると、確かに俺の両手は、土がところどころに付いた軍手を嵌めていた。
「あー……、うん」
「そりゃ暑いわー、外しな外しなー」
何となく反論したくなったけど、みどりの言うことは別に間違っていない。
歩き出したみどりに小走りで追い付いて、その隣に並ぶ。
そして、両方の軍手を外してみると、さっきまでの暑さが嘘のようで。軍手の中はかなり蒸れていたから、一気に風が涼しくなったように感じた。
「どーですかー? 涼しくなった?」
「まあまあ」
「おー、それは良かった」
「でも、喉も渇いてる」
「そんなら、さっさと帰ってトシちゃんにラムネ貰おー」
そう言ったみどりは、俺が頷いたのを確認すると、両手で麦藁帽子を押さえながら笑った。
相変わらず太陽はじりじりと地を焦がす。
雲量1、快晴。天気記号は一重円だったっけ。
いつだったか理科で習ったな、と思っていると、目の前を猫が横切っていった。
その猫の行方を視線で追えば、それは誰かの家で。
「すご……」
たくさんの向日葵が咲き誇る、広い庭。その片隅に、一際鮮やかなピンクの花を見つけて、思わず立ち止まる。