どうして、こんな状況になったのだろうか。
「あまー」
「うまー」
訳も分からぬまま、ガタガタのアスファルトの上を走って連れて来られたのは、屋敷かってくらいの大きな家。
……の、庭園。
「ほら、柊も」
爛々と目を輝かせて、みどりが差し出してきたピンクの花。戸惑いながらもそれを受け取ると、満足げに笑みを浮かべる。
「遠慮せずにどうぞー」
そうは言われても、どうするべきなのか、よく理解できていない。
躊躇しているうちに三人は、次から次へと花を摘み、口にくわえていく。
ブチッブチッ、と乱雑な音が引っ切りなしにする。これは自然破壊だったり、……しないのだろうか。
「達郎」
「ん?」
「聞きたいことあるんだけど」
とりあえず、と思って一番話しやすそうな達郎に声をかけた。達郎は、にかっと白い歯を見せて、どうした、と首を傾げる。
「ここどこ」
「俺んち」
何ともシンプルな答えが返ってきて、ふーん、と呟くと由香が補足をする。
「たっくんちは、野口の本家だからさー」
「本家って、さっき言ってた分家とかの?」
「そう。おおもとの家って言ったら分かる?」
「あー……、うん、多分」
そう言ってから思う。本家って、なんかすごい響きだ。
「でっかいやろー?」
何故か自慢げなみどりの扱いは、まだよく分からない。
とりあえず放置しておくことにする。