東京にいた頃は、町内清掃なんて一回も出たことがない。いつもどうしていたのか気になって、聞いてみようと思ったけど、あの変な動きをしている物体には話し掛けたくない。
ブチッと雑草をちぎれば、根から抜け、と俊彦に怒られた。
「別にどっちでもいいだろ」
「舌打ちすんな、反抗期」
「反抗期じゃねーし……」
「かーゆーいー!」
鎌で刈っている人だっているんだから、別にいいだろう。そう言って反論してみたけど、黙って抜いとけ、とやり込められた。
「……三十路うざい」
「おい、お前の息子、反抗期まっしぐらやぞ」
「え、なに、背中掻いてくれんの!? 助かるー!」
「……」
「……」
「……俊彦、場所移動しよ」
「せやな」
足元でバッタが跳んだ。顎を伝った汗が、ぽたりと地面に落ちる。無理矢理履かされた長いジャージで、余計に暑い。なのに、変な動きをする物体が視界の端に入り込んでくるものだから、さらに暑い。っていうか、鬱陶しい。
気を紛らわせようと、そばにあった雑草を抜く。俺がちゃんと根から抜いたのを見て、俊彦が深く頷いたのが若干うざい。
舌打ちでもしてやろうかと思ったけど、たったそれだけをするエネルギーさえも惜しい。黙ってまた雑草に手を伸ばした。
そのとき。
「おっはよー!」
ドサッと音がした。