「あったあった、はい、由香」


息を切らしながら、あたしの向かい側に座ったたっくんは、由香に小さな袋を渡す。


「ありがとう、開けてみてもいい？」

「どーぞっ」


由香は、また丁寧にセロテープを剥がす。あたしはカルピスを一口飲んで、由香の指先に視線を向ける。


「……わ、リボンだ！」


少しして出てきたのは、赤に白のドットが入ったリボンのヘアゴム。


「めっちゃ可愛い！」

「ほおー、いいなー……！」

「ね、可愛いやんね！」


四方八方からそれを見つめて、同意を求めてきた由香に頷く。


「達郎、自分で選んだ？」

「うん。女子って何がいいかよく分からんけど、由香は髪の毛長いからなー」

「どこに買いに行ったわけ？」

「ジャスコの専門店街の雑貨屋。入るの恥ずかしかったわー、店にいる客、女子ばっかりやったで」


たっくんは柊にそう言って、得意げに笑っていた。

あの可愛い店に、男子一人で入っていくのはかなり勇気がいるらしい。確かに店にいるのは女子ばっかりだもんなー、と思いながらたっくんと柊を見ていたら。




「……嬉しいな」


隣でぽつりと、由香の声が聞こえた。

その声はあまりにも小さくて、どうやら男子二人には聞こえていないようだ。ちらっと由香を見ると、両手でヘアゴムを持ち、あの綺麗な笑顔でじっと見つめていた。



「由香、気に入ったかー？」


武勇伝を語り終えたたっくんが、にこっと音がしそうな笑顔を由香に向ける。



「うん、ありがとう」



笑みを深めた由香はやっぱり綺麗で。


あたしはそんな二人を見ているだけだったのに、少し、くすぐったかった。