「むふふ、びっくりした?」
「もー、何事かと思ったよ!」
「……クラッカーって、人に向けるの禁止じゃなかったっけ」
「柊、細かいこと気にしとったらやってけやんぞー」
どっきり成功だ。
純粋に驚いてくれたのが嬉しくて、頬が緩む。
にやにやしたまま、床に散らばった紙テープや紙吹雪を拾い集めれば、いつの間にか由香まで手伝ってくれていた。今日は主役なんだから、座っててくれてもいいのに。そう思いながら、部屋の隅に置いてあったごみ箱を持って来る。
「由香、付いとる」
「え?」
「ん、ほらこれ」
たっくんが由香の髪の毛に付いていた紙吹雪を取る。
それを横目に、あたしは固めておいた紙テープや紙吹雪を、ごみ箱へと突っ込んだ。
「あ、ありがとー……」
「いいえー。みど、これもごみ箱入れてー」
「ういー」
さっきまで綺麗だったクラッカーの中身は、一瞬にして、ただの紙屑になってしまった。ちょっと呆気ない運命だ。
ごみ箱の中を見つめて、そんなことを思っていたら。
「なに、ごみ箱の観察?」
「断じて違う……!」
柊に鼻で笑われた。