「おじゃましまーす」
たっくんの家は、おじいちゃんたちが住んでいる母屋と、たっくん親子が住んでいる離れがある。日本家屋の母屋とは違い、離れは洋風で、当然ながら玄関も引き戸ではなくドアで。由香の礼儀正しい声と共に、ガチャリ、ドアの開く音がする。
息を止めて、壁越しにその音を聞く。
「たっくん? 上がっていいのー?」
返事がないのを不思議に思ったのか、わざわざ確認する由香。しばらくすると、階段を上ってくる足音が聞こえてきた。
ぎゅっとクラッカーの紐を握る。
たんたん、たんたん。
たん。
「入るよー?」
コンコン、と軽いノックのあとに、すぐそばで聞こえた由香の声。
一呼吸置いて、ガチャリ、開いたドア。
「由香、おめでとーっ!」
そう言うと同時に、ぐっと紐を引っ張る。パンッ、と破裂音がして、一気に中身が出てきた。
あたしと一緒くらいのタイミングでたっくんのクラッカーが鳴り、少し遅れて隣の柊がクラッカーを鳴らした。
カラフルになった視界。
色とりどりの紙テープや紙吹雪。
その中に見えた今日の主役は、耳を軽く押さえながら片目を開けてあたしたちを確認して。
「び、っくりしたー……!」
そう言って、ほっとしたように笑った。