「……用がないなら、俺寝るから」
「わー、違う違う! 待って柊、用ある!」
家の中に入ってしまいそうだった柊を慌てて止める。
柊はというと、不機嫌さに拍車がかかったようで、ぐっと眉間に皺を寄せた。
「なに。暑いから簡潔に。さっさと言え」
「分かった分かった、分かったから! そんな睨まんと……」
「おい、みどり」
柊を宥めようと言葉を探していたところに、酒屋のほう、すなわち裏口のほうからトシちゃんがあたしを呼んだ。
一触即発の柊をたっくんに任せてそっちに行くと、トシちゃんは何やらビニール袋を持っていて。
「なにー?」
「これ、由香に渡しとけ」
「お?」
「ん」
押し付けるように渡されたビニール袋。受け取って中を見ると、それは大量の駄菓子で。
「もうすぐ賞味期限切れそうなやつだけどな」
「え、いいなー!」
「由香に、やからな。ちゃんと由香に渡しとけよ」
トシちゃんは念を押して、ふう、と紫煙を吐いた。
「今日やろ、由香の誕生日」