「みどーっ、たっくん来とるでー!」

「今行く今行く!」


一階から聞こえたお母さんの声に大声で返事をして、去年買った大きめのカゴバッグにガサガサと荷物を詰め、階段を駆け降りる。

黄色の半袖Tシャツ、薄い色のデニムショーパン。

その辺に放置されていた麦藁帽子を被り、サンダルに足を引っ掛けて、家を飛び出した。


「たっくんおはよー!」

「うん、おはよう。今日は一段とすごい寝癖やな」

「手紙書いとったら寝るの遅くなったんよー」


苦笑するたっくんにそう言いながら、カーポートから自転車を出して跨がる。

そんなあたしを確認したたっくんは、ゆらりゆらりと自転車を漕ぎ、畑ひとつ挟んでお隣りのトシちゃんちの前でブレーキをかけた。


「あ、トシちゃん」


たっくんに倣って自転車を止めていると、煙草をくわえながら打ち水をしているトシちゃんがいた。今日も相変わらずひょろひょろだ。そろそろ無精髭を剃ったらいいのに。


「あ? お前ら朝から何してんの?」

「柊呼びに来たんよー」

「遊ぶ約束してたんか?」

「うん!」


大きく頷くと、トシちゃんは手を止め、ふらふらと玄関に向かっていく。