「っていうか、スイカ冷やしてないやん!」
「本当や! 柊、冷やしといてくれやんだん?」
重い瞼を無理矢理開けると、対岸にいたはずの二人は戻ってきていて、置きっぱなしのスイカを指差した。
「……頼まれてないし」
「そうやけどー、スイカ冷やすのは常識やろー」
そう言いながら、みどりはスイカを両手で持ち上げ、それを抱え込むようにして片手で持ち、もう片方の手で俺の手首を掴んだ。
え、と思う暇もなく、ぐんっと引っ張られて立たされる。
「ん、行くよ」
「は?」
「れっつごー」
訳の分からない俺を無視して、みどりは川のほうへと歩き出した。
手首は掴まれたままで、必然的に付いていく羽目になる。
数歩進んだ時点で、スイカを冷やしに行くのだと理解したけど、どうして俺も連れていかれているのかは謎だ。
「みどり」
「んー?」
さっき座っていたところから川までの距離は、ほんの数メートル。
そこから川の流れと逆の方向に進むみどりに声をかける。
「なんで俺は付いていかされてるわけ?」