「あ! セミの抜け殻発見!」
そんな嬉しそうな声は、案の定みどりで。
「やっふーう!」
「あ、みど、ずっる! 俺も探すしな!」
駆け出したみどりを追いかけ、達郎も走り出した。
残されたのは、俺と由香。
「……小学生かよ」
「ねー」
苦笑しながら由香は日陰に座り込んだ。俺も手持ち無沙汰だから、スイカをそばに置いて、由香の隣に座る。
川原とは言っても、ここは上流のほうで、ほとんど山の中に近い。木々は生い茂っているし、日なたより随分と涼しいから、俺にとっては有り難い。
「柊、虫よけスプレーする?」
「あー、うん」
由香から受け取り、腕や足や首の後ろにスプレーを振ると、独特の匂いが広がった。
「ん、ありがとう」
「どういたしましてー」
ビーチサンダルを履いているみどりと達郎は、ずかずかと川の中へと入っていく。
それを見る限り、川の底は深いわけではないようだ。二人のふくらはぎ辺りで、流れを乱された水の波紋が揺れている。