けらけらと笑う達郎の運転は、みどりと比べものにならないくらいに丁寧で、安定している。
こんなに落ち着いて、自転車の荷台に乗ったのは久しぶりだ。
どこの川に向かっているのか分からないけど、結構な距離を来たような気がする。それこそ、学校までの道のりよりは短いとは思うけど。
移り行く景色は、田んぼ、時々、畑。
カラスよけに張ってあるテープが、太陽の光を反射して眩しい。
それがだんだんと林のような景色に変わっていく。
ぼんやりと眺めていたら、キュッ、と音を立てて自転車が止まった。
予期せぬブレーキに対応できず、達郎の背中に少しぶつかってしまう。
「あ、ごめん」
「大丈夫」
言いながら、達郎は自転車から降りる。
それに倣って俺も荷台から降り、地に足を付けると、さっきまで聞こえていなかった水の音が聞こえてきた。
その音のするほうに視線を向ければ、幅の狭い川があった。
「この川?」
「うん。だいたい遊ぶときはこの川やからなー」
「へー……」
「柊、ちょっとこれ持って」
そう言われて首を傾げると、達郎は自転車のカゴからスイカを取り出す。
受け取ると、腕にその重さがずしっとやってきた。